第19章 grand finale √parallel
「めでたし、めでたし」
ネオン煌めく繁華街。
メインストリートに面したファーストフード店で、カオリは炭酸飲料を啜っていた。
その隣でハンバーガーを頬張るのは、木兎光太郎である。
「ほええ!ほえにゃほにょ!」
「木兎さん、口の中身を呑みこんでから話しましょう……行儀悪いですよ」
後輩である赤葦京治にやんわり諭されて、ごくん、喉を鳴らした木兎が改めて口を開いた。
「へー!それがカオリの初恋か!」
なんかちょっと嫉妬するなー!
あっけらかんと話して、木兎は本日4個目のハンバーガーに手を伸ばした。
その様子を「お前まだ食うのかよ」と、呆れ顔で眺めているのは黒尾鉄朗である。
彼らは皆、都内にある高校の制服を身に纏っており、その足元にはスポーツ用のセカンドバッグが置かれていた。
「素敵だったなー……彼ね、私の王子さまだったの。かっこよくて、背が高くて、本当にだいすきだった」
うっとりとして話すカオリ。
それに呼応するようにして木兎がイジケはじめる。すかさず機転を利かせるのは、赤葦だ。
「……黒尾さんは何かないんスか」
「ん? 何かって、なに」
「過去の美談、ってやつですよ」
努力の甲斐あって、木兎はカオリから意識を逸らし、身を乗りだす。
「黒尾の初恋バナ!聞きたい!」
「ちょ、光太郎……食べカス飛んでる」
カオリがうざったそうに紙ナプキンを渡すが、木兎は丸無視だ。ちっとも聞いちゃいない。
矢面に立たされた黒尾は、うーん、と小さく唸ってからポツポツと語りはじめた。
「恋バナ、じゃねえけど、俺にもあるぜ。そういう不思議な経験。まあ、親父から聞いた話なんだけどな」