第18章 xxx ending √3:TETSURO
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「これ、ください、七号で」
柔らかな日射しが降る午後三時。
同僚の夜久に無理を言って代わってもらった勤務。なんとなく恥ずかしく思いながらも立ち寄った、小さな宝石店。
今夜はクリスマスだ。
彼女と出会った冬。彼女と結ばれた冬。寒い季節にはたくさんの思い出が詰まっている。
「ありがとうございました」
丁寧に頭をさげる店員の声を背に、静かに開く自動ドアをくぐった。
ふと、空を見上げる。
うすい雲を一面に広げた冬の晴天だった。ホワイトクリスマス、ってワケにはいかなそうだな。
『黒尾って、いつも空を見てる』
カオリにそう言われたのは、いつのことだったか。自分でも気付いてなかったクセを見出されて、ちょっと恥ずかしかったのを、よく覚えてる。
いつでも俺に寄り添ってくれた彼女。
俺の、最愛のひと。
そんな彼女に、俺は今日、この指輪を贈るつもりだった。
「……驚くだろうな、アイツ」
ボソ、と独りごちて、見慣れた町を歩く。徒歩のテンポに合わせて流れていく風景。彼女をバイクの後ろに乗せて走った。
俺たちが生きた町。
ふたりの軌跡を辿るようにして、歩く。下を向かないように。この涙が、零れてしまわないように。