第18章 xxx ending √3:TETSURO
「俺、好きだよ……お前のこと」
ふわり
感じるのは彼の体温だった。
部屋に戻ろうとした私を、後ろから抱き締める。ゴツゴツした身体。高いところから降る低音。コーヒーと柔軟剤の香り。私の、大好きなひと。
「好きだ、カオリ、……スゲエ好き」
何度も。何度も。
彼の好きな体勢で囁かれる愛の言葉。好きだ。カオリ。ずっと好きだったよ。ひとつひとつが胸に沁みていく。
「私、……黒尾の側にいていいの?」
ぽつりと呟いたら涙声で。
うまく喋れない。声が裏返る。喉から咽ぶ音が漏れて、私を抱く逞しい腕を濡らしていく。
「……私、汚いよ、すごく……色んなヒトと寝て、浮気みたいな、たくさん……っ傷、つけた…………だから、」
「それでも俺はカオリがいい」
「…………っくろ、お」
「どんなカオリでも、お前がいい」
「……ふ、ぇ……っ、……」
次から次へ。落ちる雫は暖かい。
彼のほうを振り向いて、その胸板に顔を埋める。広い背中に腕を回して、ぎゅって、抱きしめる。
「カオリは? 好き?」
問う声音はどこまでも優しかった。
「好き……っ大好き……!」
彼の手が背中をさすってくれる。
黒尾は、私が泣き止むまでずっと、そうしてくれてた。いつかと同じ光景。同じ温もり。あったかいね。すごく、すごく幸せだよ、私。
ふと、離れていく体温。
見つめ合えばそこには短い沈黙。キスして。どちらからともなく、視線でそう訴える。
星の落ちそうな夜。輝くのはオリオン座。冬の夜空のしたで、私たちは、初めてのキスをした。