第4章 xxx 03.新規一名
「お客さまお帰りです」
『あいよ。おつかれィ』
カウンターで私の電話を受けるのは光太郎だ。他のお客さんや女の子との遭遇を避けるために、私たちはこのような客の見送りをする。
しばらくすると光太郎が部屋にやってきて、チョイチョイ、と指だけで手招きをされた。
「なに?」
「どうだった。初客」
「うん、まあまあ」
「なんもなかったか?
痛いコトとかされてねえ?」
これはたぶん、心配してるとかではなく、黒服としての業務なんだろう。ホストを管理するのが「クソ川ボゲェ!」の岩泉さんなら、女の子のケアをするのは光太郎の役目だ。
こういうのも、ひとつひとつ、慣れていかなきゃいけないんだよね。そう思うとなんか悲しいな。
「何もないよ。大丈夫」
そう言って口元だけで笑ってみせる。
そしたら、光太郎の大きい手が伸びてきて、頭をわしゃわしゃされて、ついでにデコピンされた。
「つまんねえこと考えんな。
普通に心配してるんだよ、俺」
「……こころ読まないでよ」
「お前が分かり易すぎんの。ったくよ、俺たち黒服だって人間なんだからな。機械みてえに商品管理してるんじゃない。忘れんなよ」
「ハイ。ごめんなさい」
「あ、まあでもアレな。俺ぶっちゃけカオリの顔と身体つきがドストライクだから贔屓しちゃっ」
「最低」
全部聞くまでもなく光太郎を追い出した私は、ふてくされてベッドに身を投げだした。
もうすぐ、この町の夜が明ける。
xxx 03.新規一名___fin.