第18章 xxx ending √3:TETSURO
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駅前は平日でも車の往来が激しい。
大きな輪形のモニュメントを横目に、栄えた都市部を抜けていく。すると見えてくるのは、情緒溢れる下町の風景だ。
賑やかな声が漏れる大衆食堂。
時代を感じさせる豆腐屋さん。
それらを眺めながら通りを西へ。可愛らしいおばあちゃんが営むタバコ店を左折したところに、黒尾の家はあった。
「黒尾ー洗剤切れたー」
「あ、やべ、買い置きしてねえわ」
「これだから独身男は困るね」
1K洋室六帖の賃貸マンション。
私はここで、黒尾と暮らしている。
半強制だったとはいえ、居候させてもらってる身なので、家事全般が私のおしごと。
遅めの昼食を終え、洗い物をする。
シンクに当たって跳ねる水。冷たい。そういえば最近、冷えこむようになったもんなあ。
そんなことを考えているときだった。
ふと、背後に気配を感じる。
香るのはコーヒーと柔軟剤の匂い。黒尾だ。この人、私が台所に立つと必ず【これ】をしたがる。
「……邪魔、動きづらい」
「いいじゃん」
「良くないハゲろ」
「うるせえ犯すぞ」
いっつもこんな感じ。
キッチンに立つ彼女をうしろから抱きしめる彼氏。ラブラブ。いちゃいちゃ。そんなものとは程遠いのだ。
出会ったときから何も変わらない。
目が合えばお互い憎まれ口を叩いて、しょうもない痴話喧嘩を繰りかえす。
それが私たちの日常だった。