• テキストサイズ

(R18) Moulin Rouge (HQ)

第18章 xxx ending √3:TETSURO



 *


 駅前は平日でも車の往来が激しい。

 大きな輪形のモニュメントを横目に、栄えた都市部を抜けていく。すると見えてくるのは、情緒溢れる下町の風景だ。

 賑やかな声が漏れる大衆食堂。
 時代を感じさせる豆腐屋さん。

 それらを眺めながら通りを西へ。可愛らしいおばあちゃんが営むタバコ店を左折したところに、黒尾の家はあった。


「黒尾ー洗剤切れたー」

「あ、やべ、買い置きしてねえわ」

「これだから独身男は困るね」


 1K洋室六帖の賃貸マンション。

 私はここで、黒尾と暮らしている。
 半強制だったとはいえ、居候させてもらってる身なので、家事全般が私のおしごと。

 遅めの昼食を終え、洗い物をする。
 シンクに当たって跳ねる水。冷たい。そういえば最近、冷えこむようになったもんなあ。

 そんなことを考えているときだった。

 ふと、背後に気配を感じる。
 香るのはコーヒーと柔軟剤の匂い。黒尾だ。この人、私が台所に立つと必ず【これ】をしたがる。


「……邪魔、動きづらい」

「いいじゃん」

「良くないハゲろ」

「うるせえ犯すぞ」


 いっつもこんな感じ。

 キッチンに立つ彼女をうしろから抱きしめる彼氏。ラブラブ。いちゃいちゃ。そんなものとは程遠いのだ。

 出会ったときから何も変わらない。
 目が合えばお互い憎まれ口を叩いて、しょうもない痴話喧嘩を繰りかえす。

 それが私たちの日常だった。

/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp