第18章 xxx ending √3:TETSURO
『お前さ、……ずっとそうやって、逃げながら生きていくつもり?』
酷なことをしたと思う。
ひどく傷付いていた彼女に【選べ】だなんて。今思えば、俺はただ、自分の考えを押しつけただけに過ぎないんだけど。
でも、それでも、あの場で逃げることが正解だとは、やっぱり思えなくて。
『大丈夫。俺が、守るから』
『……わかった。逃げない』
彼女は、立ち向かうことを選んだ。
永遠にも思える時間が流れて、カオリが、こくりと頷いてくれたとき。その震える肩を抱いて誓った。俺がこいつを守る。何があっても守る。
絶対、幸せにする、って。
結局、あいつの元上司とやらはセックスに夢中で、俺たちには気付きもしなかったんだけど。それはそれとして。
「黒尾、今日のご飯何がいい?」
「金目鯛の煮付け」
「自分の給与明細見てから言いなよ」
ん、ぐう。
可愛くねえ。いや可愛いけど、でもやっぱり可愛くねえ。クソ生意気なとこは相変わらずだ。
カオリはあれ以来、俺のマンション──といっても独居用の狭い部屋だけど、で暮らしていた。
キャッスルのホストやら、白鳥沢組やら、こいつの周りには危ない奴が多すぎる。だから、半強制的に住まわせることにしたのだ。
『は!? 黒尾と住む!?』
『何度もそう言ってんだろ』
『やだ! 絶対いや!腐る!』
腐るって何が!?
そうツッコミをいれた俺が涙目だったことは、まあ言うまでもないのだが、今となってはイイ思い出。
その後【岩泉】と【赤葦】に別れを告げた彼女は、無事に、俺の部屋に身を置くことになったワケだ。
そんな生活をはじめて、明日で二週間が経とうとしていた。