第17章 xxx ending √2:KEIJI
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「怒らないで聞いてほしい」
突然病室にやってきた金融屋は、見舞いもそこそこにそんなことを言った。何かと思って訝れば、彼の、赤葦京治の口から出たのは単純な質問だった。
「岩泉さん、アンタ、……まだカオリのことが好きですか」
何を、言ってんだ、こいつは。
正直そう思った。
怒りすら覚えた。
俺にそんなこと聞いてどうする。仮に、俺が、彼女のことをまだ想ってるとして。だから何だっていうんだ。自然と眉根に皺が寄っていく。
「無礼は承知です。でも、答えてくれ」
彼は問う。
まだ、カオリのことが好きか、と。
苦しげに問うのだ。まるで血反吐でも吐いてるかのように。沈痛な面持ちで。
「……ああ、……好きだよ」
徹との一件があってから、失っていた声。久々に聞く自分の声はひどく震えていた。情けねえな。カオリが目の前にいるワケでもねぇのに。
「そうか……それが聞けて良かった」
ふ、と赤葦京治が笑ってみせる。
とても悲しそうな笑顔だった。
笑ってるのに、泣いてるような。安堵と悲哀がない交ぜになったような。そんな笑顔。
少なくとも俺にはそう見えた。