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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第17章  xxx ending √2:KEIJI



 季節外れの雨が降る。

 ポツポツと雫。冬の夕暮れ。
 朝までの抜けるような青空は消え、どこまでも続く雲は鉛色。

 重い。ただ漠然とそう思う。

『岩泉さん、アンタに頼みがある』

 赤葦京治が差し出したのは、一台のスマートフォンだった。

 何のアドレスも登録されていないそれ。恐らく、名義人はこの世に存在しない誰かだろう。裏で生きる人間の常套手段。でも、一体何のために。

 抱いた疑問を口に出す暇もなく、矢継ぎ早に言葉が足されていく。


『明日、白鳥沢組に関するニュースが流れたら、この番号に電話してください。きっと、カオリが出るはずです』

『……カオリが?』

『ええ。それで、なるべく遠くへ……俺との関わりがバレないように、逃げてほしい。彼女を連れて』


 彼の並々ならぬ決意。覚悟。

 それは警察に自首することだった。
 俺が飲まされた違法ドラッグ。それに伴うビジネス。白鳥沢組の実質的な資金源。全てを道連れにして自首する旨を、彼は語ったのだ。

 もう、誰も傷付かなくていいように。

『この町を救いたい……なんて、大それたことは言いません。ただ、それでも、守りたいんです』

 カオリを。カオリの、笑顔を。

『俺は結局、泣かせることしかできないけど……岩泉さん、アンタなら、』

 赤葦京治は笑っていた。
 血だらけのスーツを身に纏って、口元だけで笑っていた。その笑顔はやっぱり悲しそうで。辛そうで。


「かっこつけやがって、……馬鹿野郎」


 季節外れの雨が降る。

 冷たい雫。冷たい夕暮れ。
 凍えた指でダイヤルを回して、泣き疲れた彼女の声を聞いて、思うのだ。

 俺は、彼の託した想いに応えることが出来るのだろうか。本当に、俺なんかで良かったのだろうか。

 分からない。今は、まだ。
 もしかしたら一生分からないかもしれない。けど、それでも、全力で愛すと誓おう。幸せにしてみせる。絶対に。

『……岩泉さん、……どうして?』

「詳しいことは会ってから話す」

 だから、迎えに行くよ。カオリ。

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