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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第17章  xxx ending √2:KEIJI



 ふと、気付く。

 ガラス製のテーブルに置かれた、小さなメモの存在に。いやだ。見たくない。読みたくないよ、そんな手紙。

 目を背けて、でも、向き直って。

 ふらつく足で歩み寄る。片手に収まるサイズの紙。それはいつか見た手紙。彼の、京治さんの、丁寧で整った字。




【幸せになること】




 そこにはたった一言。
 そう、書かれていた。

「……っど、して……どうして……!? 自分ひとりで、全部、背負っ……京治さん、っふ、……ぅ、わあああ……っ!!!」

 ぱた。ぱた。ぱた。

 落ちる涙はとめどなく。彼の字を、彼の愛を、濡らしてジワリと滲みていく。忘れじの記憶。あの日と同じ。でも、あの時はまだ彼がいた。

 確かに、ここにいたのに。

 スマホの裏に貼りつけたプリクラ。光太郎と、私と、肩を並べる彼。朗らかに笑う。

「京治さん、……っ京治さん!」

 何度呼んだって、彼はもういない。戻ってこない。甘えた声で──「カオリ」──私を呼んでくれる彼は、もう。

 どこにもいない。

「……っい、や……いや、嫌だ」

 こんなの嫌だよ、京治さん。

 泣いても泣いても、涙が枯れることはない。時間が経つのも忘れて泣く。いつまでも、彼を想って。そうやって泣き続けて、どれくらいが経っただろう。


 ピリリッ


 鳴ったのは、見覚えのないスマートフォンだった。

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