第17章 xxx ending √2:KEIJI
ふと、気付く。
ガラス製のテーブルに置かれた、小さなメモの存在に。いやだ。見たくない。読みたくないよ、そんな手紙。
目を背けて、でも、向き直って。
ふらつく足で歩み寄る。片手に収まるサイズの紙。それはいつか見た手紙。彼の、京治さんの、丁寧で整った字。
【幸せになること】
そこにはたった一言。
そう、書かれていた。
「……っど、して……どうして……!? 自分ひとりで、全部、背負っ……京治さん、っふ、……ぅ、わあああ……っ!!!」
ぱた。ぱた。ぱた。
落ちる涙はとめどなく。彼の字を、彼の愛を、濡らしてジワリと滲みていく。忘れじの記憶。あの日と同じ。でも、あの時はまだ彼がいた。
確かに、ここにいたのに。
スマホの裏に貼りつけたプリクラ。光太郎と、私と、肩を並べる彼。朗らかに笑う。
「京治さん、……っ京治さん!」
何度呼んだって、彼はもういない。戻ってこない。甘えた声で──「カオリ」──私を呼んでくれる彼は、もう。
どこにもいない。
「……っい、や……いや、嫌だ」
こんなの嫌だよ、京治さん。
泣いても泣いても、涙が枯れることはない。時間が経つのも忘れて泣く。いつまでも、彼を想って。そうやって泣き続けて、どれくらいが経っただろう。
ピリリッ
鳴ったのは、見覚えのないスマートフォンだった。