第17章 xxx ending √2:KEIJI
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目を覚ますとそこに、彼はいなかった。
「……京治、さん……?」
すでに冷たくなったベッドの右側。繋いで眠ったはずの右手。温度がない。彼がいない。どこにもいない。
飛び起きて部屋を見回す。
バスルーム、トイレ、玄関。全部見て回った。だけど、京治さんは見つからない。服も、靴も、全部なくなってる。
慌てて掴んだのはスマホだった。
ずっと、ずっと、感じてた。
言いようのない違和感。胸騒ぎ。その正体を全力で否定したくて、京治さんの番号を探す。探す。探す。
──ない。消えてる。消されてる。
サ、と血の気が引いた。
まさか、そんなワケない。こんなの私の勘違いに決まってる。彼はきっとどこか、そう、コンビニに行ってるのかもしれない。いつかの私のように。
震える手でテレビのリモコンを握って、そっと、電源ボタンを押した。
「次のニュースです」
「──指定暴力団白鳥沢組の構成員が今朝、自首したとして、警視庁暴力団対策課は対応に追われています」
「警察関係者は “この逮捕劇によって白鳥沢組の違法ドラッグの売買が明るみに出た。組の解体は止むを得ないだろう” と語っており、警視庁は大規模な家宅捜索に踏み切りました」
ウソ、だ。
嘘だ。嘘だ。こんなの、嘘。
「嘘って、言ってよ……京治さん」
突きつけられた現実は、残酷。
どうして気付かなかったの。
どうして気付けなかったの。
彼は何度も言おうとした。きっと、最期まで伝えようとしてくれていたのに。