第17章 xxx ending √2:KEIJI
不思議な子。それが第一印象。
俺が寝てても指一本触れてこない。それどころか、彼女は喋りかけてもこなかった。ただ黙って、ジッと、部屋の隅で膝を抱えていた。
たしかに彼女は俺のタイプだったし、どうせ休んでいくなら【あの子】の部屋で、とは思ったけど。
この界隈の女は皆、俺を知ってる。
金貸し屋で、借金取りで、白鳥沢の犬だってことも。
だから媚びを売る。香水くさい身体ですり寄って、化粧だらけの顔で笑って、一歩引いたところからご機嫌取りをするんだ。
でも、彼女はそれをしなかった。
興味が湧いた。知りたいと思った。
彼女がどんな子なのか。何を考えてるのか。どこから来て、何を見て、どう育ってきたのか。どうしてこの町にやってきたのか。
気付けば彼女に夢中だった。
『本名は?』
『……カオリ、です』
『カオリ』
恋なんて、したことがなかった。
誰かを想ったり、焦がれたり、苦しくなったり。そんなの面倒なだけだと思ってた。ましてや、愛なんて。
そんなの都合のいい【呪縛】だ。
愛してる。お前を、あなたを、愛してる。親に幾度となく言われてきた。女に言われたことだってある。でも、本当に俺を想ってくれる人なんて、誰もいなかった。
俺が、たった一人の跡取りだから。
俺の、肩書きと権力が欲しいから。
ただそれだけ。
『もっと、……奪って』
だから彼女に、カオリに、そう言われたときは心底驚いた。同時にすごく、すごく、嬉しかった。