第17章 xxx ending √2:KEIJI
「カオリー……俺、寂しか、っうう」
ひーん、と小さく喉を鳴らす光太郎。
普段は騒音レベルでうるさいくせに、泣くときはこんなにも静かだなんて。放っとくワケにはいかないじゃない。
「泣きすぎ、ほら、もう泣かない」
よしよし。頭を撫でる。
ポフポフ。背中を叩く。
身体を丸めて私に抱きつく光太郎は、相変わらず大きくて、懐かしい匂いがした。オウルの店内で焚いてるお香だ。なんだか安心する。
「マジで二度と会えないかと思った」
「大袈裟だよ……同じ町にいるのに」
やっと落ちついた彼が鼻を啜る。身体を離して、お互いをジッと見つめる。こうして顔を合わせるのは、イーグルに引き抜かれた夜以来だ。
「また会えてよかった!」
へへっ、彼が笑った。
ああ、光太郎だ。よかった。何も変わってない。──ちゃんと光太郎だね。
京治さんの「ちゃんと」の意味が、やっと理解できた。
「感動の再会は済みましたか?」
まるで狙いすましたかのように。
クレーンゲームの影から京治さんが現れた。戻ってきた彼は、その腕に、不気味な金魚のぬいぐるみを抱いている。しかも巨大だ。
「どうしたんですか、それ」
「取った。カオリに似てたから」
はいどうぞ、と胸に押しつけられる人形。ぶらさがったタグには【金魚草がついにヌイグルミ化!】と書かれている。
いや、あの、プレゼントは嬉しいんですけど、なんで絶叫顔なのこの金魚。怖い。顔が。呪われそうだ。
「私に、似、て……あはは」
京治さんの目には私がこう見えてるんですかね。このショックから立ち直るには、たぶん、相当時間がかかると思う。