• テキストサイズ

(R18) Moulin Rouge (HQ)

第17章  xxx ending √2:KEIJI



「心配した、すごく」

 頭上から降る京治さんの声。

 恐る恐る顔をあげてみる。すると、さっきまでの怒った彼はもういなかった。ひどいクマ。寝てない、よね。きっと。

「……ごめんなさい」

 そっと告げて。彼の頬に触れて。

 人差し指でくすんだ目元をなぞる。京治さんが瞼を閉じる。心地よさそうな顔。ホッとしたような溜息。

「よかった。ちゃんとカオリだ」

「……ちゃんと?」

「また会えてよかった」

 なにかを含むような物言いだった。

 彼の真意が見えなくて、思わず、怪訝そうな顔になる。しかし、直後に聞いた京治さんの一言によって、その【小さな疑念】は吹き飛んでしまった。


「デートしようか」


 ん、え?

 突然のお誘いに面を食らう。一時停止する。しばらく思考が止まったままになって、ふと、単語の意味を理解した。

「デート!?」

「そう、お出かけ、しよ」

「お、……っお出かけ」

 私、さっきから彼の言ったことを反復しかしてない。これじゃまるでオウムだ。阿呆の子だと思われる。いや、あながち間違いではないけれど。

「そんなに驚くこと?」

 京治さんがおかしそうに笑う。

 軽く握った拳を口元にあてる仕草。へにゃりと曲がった眉。京治さんって、こんなに素直に笑うんだ。

 知らなかった。


「よし。じゃあ、行こうか」


 ん、と手が差しだされて。握る。繋ぐ。指が絡まりあう。恋人繋ぎっていうんだよね、これ。なんか嬉しいな。

 手に手を取りあって外に出たあと。

 無人になった部屋の、恐ろしいまでに静まりかえった静寂を、私は知らない。

/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp