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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第17章  xxx ending √2:KEIJI



 や ば い

 玄関に入るなり浮かんだのはその三文字。すでにあったのだ。靴が。本革で、イタリア製の、京治さんのお靴が。

 帰ってきている。
 そしてたぶん、怒ってる、いや絶対。白布さんからもあれほど「外出は避けるように」って言われてたのに。

 どうしよう。あれかな。
 やっぱ簀巻きで海かな。

 任侠映画さながらのシーンが脳裏を過ぎる。さながら、というか、京治さんにとってはリアルなんだよね。これは本格的に土下座の準備が必要かもしれない。


「ただいまー……」


 抜き足、差し足。

 忍者もびっくりするほどの忍び足でリビングに向かう。ドアから顔半面だけを出して、なかの様子を伺う。

 あれ、おかしいな。誰もいない。


「おかえり」

「ほ、げゃー!出たー!」

「……ほげゃあ?」


 振り向けばそこには京治さん。

 私の奇声を聞いた彼は、なんとも形容しがたい顔で小首を傾げている。ちなみに私服だ。私服である。

 初めて見るスーツ以外の姿。

 ざっくり編みのオーバーサイズニット、だと……? その鎖骨は誘ってるんですか。袖からちょこっとだけ出した指先は誘ってるんですね。

 では、いただきます。
 ってそうじゃなくて。


「カオリ、お前、どこに行ってたの」


 やっぱり怒ってる。
 京治さん激おこだ。

 雪女レベルに冷たい目してるし、声のトーンも超低い。お巡りさんと一緒にいました。言えない。言ったら氷にされて葬られる。

「ち、ちょっと、コンビニに」

 もごもご。もそもそ。

 しょうもない嘘をつこうとした私を、彼の、ガーネッシュの八番が塞いだ。海外のお香の匂い。京治さんの匂い。

 あれ、私、抱きしめられてる。

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