第2章 xxx 01.研修
白髪の男は──名前は教えてもらえず「オーナーと呼べ」と言われたのだが、オーナーは、繁華街の一等地に店を構えているらしかった。
連れてこられた場所は雑居ビルの六階で、扉を潜るとピンクの照明に目が痛くなる。
「……ここ、ヘルスですか」
「おーよく分かってるじゃねェの。伊達に売りやってませんでした、ってか? まあ、だったら話は早いわな」
オーナーは咥えたままのタバコに目を細めて、スタッフルームと書かれただけのカーテンを開けた。
雑多に物が置かれた狭いスペース。
その奥のパイプ椅子に座ってスマホをいじっていた男が顔をあげる。
「あ、オーナー、はよざーす」
「光太郎てめェ……挨拶はビシッとしやがれって何度も言ったろ」
「すんません」
毛ほども反省していない様子の「こうたろう」という男。十代後半だろうか。たぶん、私とそんなに変わらないはず。
彼はオーナーの後ろに立っていた私に気付くと、ギョロリとした目でこちらを見て笑った。
「新人の子? よろしくー」
ひらひらと手を振る姿はまだあどけない。そんな彼と私を交互に見て、オーナーが言い放った。