第2章 xxx 01.研修
「はい。んじゃあ今から研修な」
研修……?
怪訝そうな顔でオーナーを見るが、答えてはもらえない。その代わり、ある物を渡されて思わず眉根が寄った。
「え、これ……うがい薬」
「そうだよ。大正解。
あとタオルな、はい」
押しつけるように渡されて、ついでに背中まで押されてカーテンの外に出る。訳が分からずきょとんとしていると、今度は光太郎に肩を抱かれた。
「あれ、もしかしてフー初めて?」
「……ふ、ふう?」
「風俗。働くの初めてなの?」
背が高くガタイのいい彼に覗き込むように聞かれて、思うように言葉が出てこない。それをイエスととったのか、光太郎は「そっか初めてかー」と何やら微笑している。
そこへオーナーの喝が飛んだ。
「オイ光、お前、食ったら殺すぞ」
ひゅっ、と息をのんだ光太郎は、青い顔で愛想笑いをしてみせる。その横顔には明らかな恐怖が見てとれた。
「や、やだなあ、わかってますよ。店の女の子には手出しませんって」
「嘘吐けクソガキが」
「うわー信用ないッスね、俺」
光太郎に肩を抱かれたまま仕事部屋に向かうまで、オーナーの鋭い視線がずっと背中に突き刺さっていた。なんだかこっちまで生きた心地がしなかった。