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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第17章  xxx ending √2:KEIJI



「黒尾……ありがとう、ごめんね」

「いいって。もう気にすんな」

 なんかあったら連絡しろよ。
 そう言い残して彼は去った。

 数時間前に待ち合わせしたコンビニの前。お腹に響くエンジン音。彼に似た黒いバイクが、白煙を巻きあげて朝焼けに溶けていく。

 その背中が見えなくなるまで見送って、それから、ひとり帰路についた。


 私は、選べなかった。


 オーナーから逃げる道も。正面から向き合う道も。なにも選べずに、ただ黙っていることしかできなかった。

 見かねた黒尾が腕を引いてくれて、結局、オーナーとは顔を合わせずに帰ってきたのだけれど。

 どうすればよかったのか。
 なにが、正解だったのか。

 ずっと分からないまま。きっと、一生分からないまま。私は自問自答を繰りかえして生きていくのだろう。

 凜とした冬の早朝。
 張りつめた空気が目にしみて、涙が滲む。その雫が落ちてしまわないようにと、空を仰ぐ。

 抜けるような晴天だった。

 恨めしいほどに美しい。美しいはずの青が、どうしようもなく憎い。手を伸ばせば伸ばすほど遠いのだ。いくら欲したところで、届かない。手に入らない、キレイな世界。

 例えば、大空を舞う鳥のように。
 

「自由に飛んでいけたらいいのにね」


 ぽそりと独りごちた【願い】は叶うことなく、冷たいコンクリートに落ちて消えた。

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