第17章 xxx ending √2:KEIJI
「黒尾……ありがとう、ごめんね」
「いいって。もう気にすんな」
なんかあったら連絡しろよ。
そう言い残して彼は去った。
数時間前に待ち合わせしたコンビニの前。お腹に響くエンジン音。彼に似た黒いバイクが、白煙を巻きあげて朝焼けに溶けていく。
その背中が見えなくなるまで見送って、それから、ひとり帰路についた。
私は、選べなかった。
オーナーから逃げる道も。正面から向き合う道も。なにも選べずに、ただ黙っていることしかできなかった。
見かねた黒尾が腕を引いてくれて、結局、オーナーとは顔を合わせずに帰ってきたのだけれど。
どうすればよかったのか。
なにが、正解だったのか。
ずっと分からないまま。きっと、一生分からないまま。私は自問自答を繰りかえして生きていくのだろう。
凜とした冬の早朝。
張りつめた空気が目にしみて、涙が滲む。その雫が落ちてしまわないようにと、空を仰ぐ。
抜けるような晴天だった。
恨めしいほどに美しい。美しいはずの青が、どうしようもなく憎い。手を伸ばせば伸ばすほど遠いのだ。いくら欲したところで、届かない。手に入らない、キレイな世界。
例えば、大空を舞う鳥のように。
「自由に飛んでいけたらいいのにね」
ぽそりと独りごちた【願い】は叶うことなく、冷たいコンクリートに落ちて消えた。