• テキストサイズ

(R18) Moulin Rouge (HQ)

第16章 xxx ending √1:TORU



 モジモジする。非常にだ。

 シャワーあがりの俺といえば、そりゃあもう、女子なら軒並み卒倒するほど艶やかで美しいはずなのに。

 なんだこの格好は。
 上下丈の足りてないスウェット。色はチャコールグレーだし、しかも、胸のとこに【Gorilla】って刺繍されてる。

 な め て ん の か


「あのさ……わざとでしょ、これ」

「あ、バレた?」

「うんブッコロ☆」


 キッチンで料理している背中をとっ捕まえて、脇腹をくすぐって、せめてもの仕返しをする。

 ころころと笑う彼女。
 つられて、俺も笑う。

 芽生える感情は、くすぐったい、何だろうこれ。感じたことのないキモチ。温かい。暖かい。

「……っふ、え……ぶぇぇ」

「あ、また泣く。徹くんの泣き虫」

「……どうせ泣き虫ですよ」

 小さなアパートの、小さなキッチン、小さなカオリの背中。力をこめれば折れてしまいそうな彼女をぎゅ、と抱きしめる。

 香るのは卵焼きの匂い。
 ほかほか、幸せの匂い。

 初めて感じる。誰かに触れることが、誰かに受け入れられることが、こんなにも嬉しい。愛おしい。


「ねえ、……カオリ」

「? なあに」

「……やっぱなんでもない」


 もっとカオリに触りたい。

 その一言がどうしても言えなかった。どの口がそんなこと言えるんだ、って、気が引けちゃって。

 手際よく卵をひっくり返す彼女。
 そのうなじに顔を埋めて、情けなく嘆息する。

/ 254ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp