第16章 xxx ending √1:TORU
脱衣所に出て、ふと気付く。
彼女がゲロ臭いと称した俺のスーツ。
馴染みのテーラーにしたためてもらった、オートクチュールの、超が付く高級品。
……洗濯機で洗われてる。
その証拠に、ドラム式の家電はゴウンゴウンと音を立ててるし、洗面台には見覚えのあるカフスやらラベルピンが置かれている。しかも無雑作に。
……総額、いくらすると思ってるのかな。ううん。文句じゃないよ。もう既にボロボロだったしサ。彼女には本当に感謝してる。してるけどね。
「せめて柔軟剤はいれてほしかった」
俺はその言葉を最後に、がっくりと項垂れるのであった。
ガチャッ!バタン!
玄関で物音がして、その直後。
「徹くーん、お風呂出たー?」
聞こえたのはのんびりした声。
どこかに行っていたのだろうか。
彼女の足音と一緒に、ガサガサ、とビニール袋の揺れる音がする。
「えっと、いま、出たとこ」
「パンツと着替え買ってきたの」
「え、あ、うん……ありがと」
何だろう。すごく恥ずかしい。
女の子にパンツ買ってきてもらうって、それ、どんな羞恥プレイなの。俺聞いたことない。
「サイズとか好みとか分かんなかったから、適当に選んじゃったけど……今日はこれで我慢してね。ここに置いておくから」
カサ、控えめに袋が置かれる。
カオリのスリッパがパタパタと台所に消えていくのを確認して、小さく扉を開けた。
「……嘘、でしょ、何これ」
用意されたのはトランクス。
しかも縦縞。青と白。マジ典型的。昭和かよ。お父さんかよ。今どき50代でもこんなもさいパンツ履かないよ!?
こんな、ダサイ下着買ってくるなんて。
「……カオリは俺のお母ちゃんですか」
ふ、とちっちゃな笑みが零れた。