第16章 xxx ending √1:TORU
「ごめんね、カオリ……ごめんなさい。俺、最低なこと……岩ちゃんにも、……ごめ、なさい……っ」
情けない懺悔だと思う。
でも、俺にはこれしか言うことができないから。
だから謝った。何度も。何度でも。
声が枯れるまで「ごめんなさい」を繰りかえして、その間、彼女はずっと背をさすってくれた。
「私も、……ごめんね」
ぽつり、ぽつり。
カオリが教えてくれる。
岩ちゃんのこと。
彼が考えていたこと。俺が思っている以上に、彼は、俺を想ってくれていたこと。埋められない溝。いつの間にか広がってしまった。そして、もう、二度と彼には会えないということ。
この町じゃないどこか。
俺たちが出会った町ではない、どこか遠いところで、彼はひとり暮らしていくのだという。
俺は、彼に謝る資格すらない。
だけど、もし。
もし願うことが許されるのであれば、彼の、幸せを。彼がいつか幸せになってくれることを、願いたい。そう思った。
「徹くん」
ふと、彼女の体温が離れる。
「変なにおいがする」
思わず耳を疑った。
え、いま、何、なんて言ったのこの子。明らかにそういうこと言う雰囲気ではない、よね。
しかし、カオリは頑として態度を変えようとはしなかった。小鼻すらつまんで、俺を、生ゴミを見るような目で見つめている。
「……シャワー浴びてきなよ」
「え、ああ、うん、……うん?」
「ゲロと同じ臭いだよそれ」
拝啓、どこかで相変わらず男を漁っているのであろう、俺の母さん。
俺は今日、生まれて初めて、女性にゲロ呼ばわりされました。及川徹、一生の不覚です。