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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第16章 xxx ending √1:TORU



 愛されたかった。

「……愛してほしかった」

 大好きだったんだ。母さんのこと。ずっとずっと憧れてた。母の温もり。注がれる無償の愛。

「触れてほしかった。抱きしめてほしかった。笑いかけてほしかった……徹、愛してるよ、って、……言ってほしかった……!」

 いつの間にか覚めた夢。
 感じる、誰かの温もり。

 あったかいな。ふわふわ。心地いい。なんだか良い匂いもする。もうちょっとこのまま、泣いていたい。

「母さっ……行かな、いで、ひとりにしないで……っ俺、いい子にするから、……だから!」


「ひとりじゃないよ」


 突然聞こえた声。優しい声。
 慈しむようなその声音に意識がクリアになる。

 瞳に映りこんだ【彼女】は泣いていて、でも、笑っていた。涙で顔をくしゃくしゃにして、笑っている。

「徹くんは、ひとりじゃない」

 彼女は言う。

 私がいる。ここにいる。皆があなたから離れていっても、世界中があなたの敵になっても、私だけはここにいるから。

 だからもう、大丈夫、と。

「……ど、して……?」

 彼女に負けないくらいグズグズの鼻声で聞けば、カオリは、俺を抱く腕に力をこめて言った。

「一緒だから」

「……いっしょ?」

「そう、一緒」

 ひとつずつ、ひとつずつ。
 知っていく、彼女のこと。

 彼女もスラムの生まれだということ。貧しく辛い幼少期の思い出。浮気性の母。父親の自殺。学校に行くことすら出来ず、蔑まれつづけた日々。

 そして、唯一の肉親であった母に、つい最近捨てられたこと。

 ああ、そうか、そうだったんだね。

「俺と、おんなじ……カオリも、……ひとりぼっちだったんだね」

 そう言って、俺は、おずおずと彼女の背中に腕を回した。

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