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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第16章 xxx ending √1:TORU



 ある日のことだった。

 きゅ、と握りしめた手。母は珍しく俺の手を引いていた。手を繋いでいたのだ。あの、母と。

 嬉しかった。幸せだった。
 今までの辛かった日々なんて、ぜんぶ、嘘だったんじゃないかって。本気でそう思った。

 綺麗に着飾った母。

 その横顔は、どんな絵本でみるお姫さまよりも美しい。世界でたったひとりのお母さん。俺だけの大切なひと。

 クリスマスソング響く商店街を、彼女に連れられて歩く。

 ショーウィンドウの向こうに見えたキラキラ。真っ白に輝くショートケーキを、俺は、きっと一生忘れない。



「さ、徹、新しいママにご挨拶して」



 最高で最低のクリスマスプレゼントだったよ。ほんと、死ぬまで忘れられないくらいね。

 母が最初で最後にくれた贈り物は、新しい母親と、新しい父親。裕福で優しく穏やかな、子供のいない老夫婦だった。

 まるでおとぎ話みたいだ。

 子供ごころにそう思ったのを覚えてる。貧しかった少年は、心優しいおじいさんとおばあさんに拾われて、幸せに暮らしましたとさ。

 ネバーネバーアフター。
 偽りのハッピーエンド。

 俺は要するに母に売られて、捨てられて、厄介払いされただけ。

 ひどい母親だった。痛いことばっかされてた。たまにしてくれた料理は超下手くそだったし、男ばっか連れこんでたし、いつもタバコ臭かったけど。だけど。

 それでも、──愛してたんだ。

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