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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第16章 xxx ending √1:TORU



 私たちを乗せたタクシーは、裏道という裏道を駆使して進む。気付けば辺りは目的地周辺。私の住むアパートが見えてくる。

 ちょっと多めのお金を支払うと、運転手さんは、無言で徹くんを運ぶのを手伝ってくれた。

「ありがとうございました」

 軽く会釈してドアを閉める。

 そのままかけ足でキッチンに飛びこんで、空のコップと、水で満たされたデカンタを掴む。

 勢いよく踵を返した先。
 ソファに寝かせた徹くんの傍らに膝をついて、コップに水を注いだ。

「徹くん、お水……飲んで」

 彼のうなじに手を添えて補助をする。しかし、うまく飲むことができない。

 唇の両端から漏れる水。

 徹くんは微かに眉根を寄せて、いやいや、と首を横に振った。

「……だめ、飲むの、ほら」

 自分の指を水に浸す。
 それを彼の口内に塗りつける。少しでもいい。水分をとらないと死んでしまうから。

 何回かその行為を繰りかえす内、徐々にではあるが、徹くんの呼吸が安定してくる。

 よかった。ひとまずは安心だ。

 ホッと胸を撫でおろす。
 よほど身体的に疲弊していたのだろう。落ちつきを取り戻した彼は微睡んで、やがて、静かな眠りへと落ちていった。


「……おか、さん……母さん、」


 寝言、だろうか。

 母さん。たしかにそう言った徹くんは、やっぱり、泣いていた。線の細い身体を丸めて。顔をくしゃくしゃにして。

 幼い子どものように泣いている。

「母、さ……行か、な……いで」

 ──ああ、そうだったのか。
 徹くんも、私と一緒なんだ。

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