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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第16章 xxx ending √1:TORU



 ぐらり。揺れる身体。

 後方に向かって倒れる自分に気付く。しかし、直感的に理解したときにはもう、背中がコンクリートに打ち付けられたあとだった。

 のしかかる重みは、彼。

「……っ、徹くん……?」

 背面に感じる鈍痛に耐え、声をかける。何も言葉が返ってこない。ぐったりと私にもたれかかる徹くんは、全身が小刻みに震えていた。

 色の抜けおちた頬。ガチガチと鳴る奥歯。これ、やばい、救急車。いくつもの単語が猛スピードで浮かんでは消えていく。

 中毒だ。助けなきゃ。
 死、水、どうしよう。

 無我夢中でスマホを握った。
 しかし、寸前で躊躇して119に発信できない。ドラッグによる発作だとバレたら警察沙汰だ。

「……っもしもし!?」

 私が電話したのは、とあるタクシー会社。白布さんから貰った連絡先一覧に記載された番号だった。


【有限会社 伊達交通】


 深緑色のミニバンタイプ。
 やってきたのは大柄な男。

「……目的地」

 その手の客に慣れっこなのだろう。

 外国人のような様相をした運転手は──ネームプレートには青根と書かれているが、ぶっきらぼうに送り先だけ聞いて、あとは口を開かなかった。

 キュル、とタイヤが鳴る。

 ゴムの焼けるような匂い。急な発進のせいで座席に背が押しつけられる。

 頻回に浅い呼吸をする彼。
 徹くんは、私の手をぎゅ、と握って離そうとしない。その縋るような仕草に、なんだか胸が苦しくなった。

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