第16章 xxx ending √1:TORU
私たちは再びの出会いを果たした。
クラブキャッスルを率いるナンバーワンホスト、トオルこと及川徹。
花のように可憐だった彼。優雅に笑う仕草はまさに、王子様、だった。今の彼にはその頃の面影すらないけれど。
ひどい姿だった。
オートクチュールのスーツはあちこちが破けていて、シャツには血が渇いたようなシミ。目元にできた大きな痣。いつ見ても美しくセットされていたはずの髪は、見るも無残に崩れてしまっている。
空っぽの目。
充血してる。
皮の捲れあがった唇から想像できるのは、やはり、例の錠剤だ。加えてひどいアルコール臭。
イーグルの従業員(しょゆうぶつ)に傷をつけたのだ。何が理由だったにせよ、その罪は何よりも重い。
私の想像しうる全ての暴力を以って、白鳥沢組に報復されたのだろう。そして手を下したのは、きっと、京治さんだ。
「ひっ……お、お前、……女だろ!」
錯乱。混乱。
彼は支離滅裂なことを叫んで、それから、私に掴みかかる。パニックを起こしているらしい。
クスリが切れたことによるショック症状、なのかもしれない。
「痛、い……っ徹、くん」
弱っているとはいえ男性だ。
加えて彼は身長も高いし、体重をかけて肩を掴まれると、身動きひとつできなくなってしまう。だから、振り払うことができなかった。
それに、なにより。
「……っ、う、ごめ、なさ……っひとり、しな、で……ごめんなさい、ごめ、なさいぃ……っ」
及川徹は泣いていた。
小さな子供のように。
ほろほろ、ほろり。大粒のなみだをいくつも落として、泣くのだ。ごめんなさい。そう繰り返して。