第16章 xxx ending √1:TORU
私たちは時こそ違えど、同じ選択をしていた。あの町から出ていこう。そして、もう、二度と戻らない。
逃げといえば確かにそうだ。
この選択が合っているのか、なんて、きっと一生分からない。でも、このまま町に残っても傷を広げるだけ。それは良くない、と思う。
歩くひとりの帰り道。
風に攫われて落ちる葉。早足で歩く、俯き加減の人びと。クリスマスソング響く商店街。
それらに紛れてこぼす涙が、少しずつマフラーを濡らしていく。
『……さようなら』
及川徹は泣いていた。
最愛に別れを告げて。
彼がその後どうなったのか、私は知らない。誰も知らない。岩泉さんも分からないと言っていた。
しかし、白鳥沢組が【処理】したことだけは確かだろう。嫌でもむごたらしいシーンが浮かんで、それを消すようにして強く目を閉じた。
ドンッ
何かに、誰かに、ぶつかった。
ぞわりと駆けぬける既視感。この感じ、前にもどこかで。そうだ。国道沿いの大型量販店。
「……っあ、れ、お姉さん……どこかで俺、と会っ、会ったことある? アハハッ……ね、あるよねェ……?」
シャネルの五番。
ほのかに、香る。