第16章 xxx ending √1:TORU
ひとつひとつ、話をした。
徹くんと出会った日のこと。私がこの町にきた理由。岩泉さんに抱いたキモチ。白鳥沢組との関わり。ここに至るまでの経緯。
そして、今朝、不正出血があったこと。それが避妊薬の効果を示すサインだということも、すべて、彼に伝えていく。
彼もまた、言の葉を紡いだ。
徹くんと出会った日のこと。彼らが追いかけた夢。私に抱いてくれたキモチ。友と、恋と、仕事と、その狭間で悩み苦しんだこと。
そして、彼が選んだのは【何も選ばない】ことだった。
自分が徹くんをこの世界に縛りつけた。自分が恋をしたせいで私を傷付けてしまった。自分がこの町にいる限り、また、同じことを繰り返してしまう。
だから、あの町から出ていこうと思った。徹くんにも、私にも、もう二度と会わないつもりだった、と。
悲しげにそう語ったのだ。
「まあ……結局、最悪な事態になっちまって、……お前にまで辛い経験させた。謝っても謝りきれねえ」
「いえ、私こそ、後先考えずに行動したから……本当にごめんなさい」
そっと、そっと。
岩泉さんの手がおへその下辺りに触れる。その上から自分の掌を重ねて、ゆっくりと、瞼を閉じる。
「別の場所で、……出会いたかった」
最後に聞いた彼の声はひどく震えていて、でも、すごく、すごく優しい響きだった。