第16章 xxx ending √1:TORU
首が取れてしまうかと思った。
それくらい勢いよく振り返って、見つめる。爽やかなペールグリーンのパジャマに身を包む彼。羽織ったオフホワイトのパーカーが目に眩しい。
岩泉さん。そう呼びたいのに。
どんなに声を振り絞っても、出てくるのは情けない感泣ばかり。
「……あ、……おお、声出る」
驚いているのは彼自身だった。
男らしい喉元に手を当てて目を丸くしている。そのまま見つめ合うこと、何秒だっただろうか。
「……っごめ、なさい」
「……ごめんな、色々」
語句選びに違いこそあれ、私たちが口にしたのは、どちらも同じ言葉だった。
キョトン。ぽかん。
そんな効果音すら聞こえてきそうだ。豆鉄砲を食った鳩よろしく。雷に打たれたアヒルよろしく。
空いた口が塞がらない。
ふ、と笑いを漏らしたのは彼だった。整った眉をハノ字に曲げて、困ったように笑う。
「カオリ、お前鼻水出てるぞ」
「!? う、わ……ホントだ」
慌てて鼻を啜る。頬が赤くなる。
なんとも女子力の低い再会、だけど、またこうして話せてよかった。本当に。
「中入れよ。ティッシュあるし」
岩泉さんは含み笑いで言って、スライド式のドアに手をかけた。
音もなくレールを滑って開く扉。
きちんと整えられた白いベッド。窓際で揺れるカーテンからは、優しい光が零れている。