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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第16章 xxx ending √1:TORU



 大学に併設された病院。
 暖房でほどよく温められた廊下は、ほんのりと消毒液の匂いがした。

【岩泉一】

 病室の入口に貼られたシールを見て、胸のあたりが重たくなるのを感じる。

 手が震える。
 足がすくむ。

 本当に来てもよかったのだろうか。彼は、岩泉さんは、私になんか会いたくないんじゃないだろうか。やっぱり、帰った方がいいのかも。

 さっきからずっとこの調子。

 病室に着いたのは30分も前なのに、未だ、一歩踏みだすことが出来ずに立ち尽くしている。


『黒尾……ありがとう、ごめんね』


 結局、私はオーナーの目から逃げて迂回するルートを選んだ。黒尾は深追いせずに頷いてくれたけど、すごく悲しそうな顔をしてた。

 待ち合わせしたコンビニで彼と別れて、私は、京治さんのマンションに帰ったのだけれど。

 残してきたのは短い手紙。
 ありがとうございました。ごめんなさい。たった二言を書くのに、何時間もかかった気がする。

 この町から出ていこう。

 そう、思ったのだ。
 どこか遠くでひとり懺悔する日々を送ろう。これが私の選択だった。我ながらに偽善的な考えだとも思ったが、他にできることなんて、私には何もない。

 そうして最後にやってきたのが、ここ。岩泉さんのいる病院である。

 コン、コン

 意を決してドアをノックする。
 返事はない。突きつけられる現実。音のない世界。きっと、彼は、まだ──


「…………カオリ?」


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