第15章 extra xxx 003
パーキングエリア内のカフェで軽食をとったあと。屋内型駐車場の再奥にある、大型バイク用のスペースを目指している途中で、それは起きた。
「あ、ん、……やだぁ」
おふす。これはもしや。
明らかに聞いてはいけない部類のそれ。艶を含んだ女性の声は、すぐ近くから聞こえている。
硬直する私。顔面を凍らせる黒尾。
どうするよ、オイ。
こちらに目配せする彼はそう言いたげだ。どうするもこうするも、そっとスルーするしかないでしょうに。
しかし、ここで更なる悲劇が起きた。
「やだ? 何言ってやがる……こっちのお口は涎垂らして悦んでるじゃねェか」
鼻にかかったような低い声。
それに加えて、あの、やたら古風なべらんめえ口調。私の脳裏に浮かぶのはド派手な白髪頭だ。
そろり、柱の影に隠れる。
「何してんだよ」と小声で訝る黒尾を、人差し指で黙らせて、薄暗い駐車場に目を走らせた。
「ん、もう……えっち」
「男は皆、狼なんだぜ」
うぷす。やっぱりオーナーだ。
公共の場で何してんだあの人。
ていうか真顔で、男は皆狼なんだぜ、とか恥ずかしいにも程がある。なんだ。あれか。決め台詞のつもりか。チョイスが古いわ色惚け天然パーマ!
(なに、まさかお前の知り合い?)
(……まあ、そんなとこ、デスネ)