第15章 extra xxx 003
ナトリウム灯のオレンジがどこまでも続いている。
長い、長い、海底トンネル。
地中深く埋められた一本道を抜けると、そこは、海に浮かぶパーキングエリアだった。
四方を囲む海。
見上げれば空。
景色を遮る高層ビルもない。鼻をつく下水の臭気もない。あるのは、パノラマのオーシャンビューと潮風の香りだけ。
「わあ……!」
安っぽい感嘆だろうか。
でも、素直にそう思うのだ。サンタさんからのプレゼントに気づいた子供のように。目を見張って。瞳を輝かせて。
「な? いいところ、ダロ」
ネックウォーマーに鼻から下を埋めて、彼は笑う。
海にせりだした展望テラス。
冷えた柵に足をかけて身を乗り出せば、それは、まるで映画のワンシーン。
「ジャック! 私、飛んでる!」
お前のどこがローズだよ。
黒尾はそう憎まれ口を叩いたけど、名場面の再現には付き合ってくれた。
後ろから抱き留められて感じる。彼の体温。このまま本当に飛べたらいいのに、なんて浪漫じみた考えが浮かんで。
ちょっとだけ視界が潤んだ。
更けていく夜。東方の空を照らしていたはずの月は、もう、西の水平線へと沈もうとしている。
それは、あの町に戻らなければならない朝が、刻一刻と近付いていることを意味していた。