第15章 extra xxx 003
冒険の結末はいたって単純だ。
壮絶なバトルもお涙ちょうだいのエンディングもない。ごく平凡なおはなし。
「ぶ、にぃー」
このブサネコ、こと、黒猫さんは生意気モデルの飼い猫だった。ちなみに最近拾ったらしく、名前はまだない、とのこと。
「研磨ぁぁ……よかったよう」
「ったく心配かけやがって!」
迷子センターで泣き崩れる両親。
KEI、こと、月島蛍にそう称された私と黒尾。そんな私たちの視線の先には、静かに寝息をたてる研磨がいた。
蛍くんのベッドで眠る彼。
その寝息はまだまだお酒臭い。頬も赤くなったままだし、聞けば、桟橋でひっくり返って寝てたのだという。
観光客のカップルに発見されて、あわや警察に通報、という寸前でランニング中の蛍くんに引き取られたんだそうだ。
「……研磨はトモダチだから」
蛍くんがぼそりと呟く。
私たちと遭遇した際、彼は、コンビニの袋を手にしていた。中身はお水と、ケーキと、シナモン香るアップルパイ。
優しいとこもあるんじゃん。
そう思ったのは彼には内緒。
「ああ、お前、芸能人か。どっかで見た顔だと思ったぜサインください」
「何このオッサン死ねばいいのに」
蛍くんがここに引っ越してきたのは、芸能界に入ってかららしい。
研磨と同じフロアだから度々顔を合わせていたんだとか。なんとなく、二人は雰囲気が似てるし、仲良くなるのに時間はかからなかったのかも。
「私も蛍くんに激しく同意する」
「気安く名前呼ばないでよオバさん」
前言撤回。
研磨は天使だけどこっちは悪魔だった。許すまじ。ちょっと年下だからって、許すまじである。