第15章 extra xxx 003
結局、研磨とは話せないまま。
私たちは彼らの住む高級マンションを後にした。
蛍くんが一緒なら安心だけど、やっぱり、起きてる研磨に会いたかったな。
今度会ったらちゃんと話を聞いてあげたい。私には親がいないから、まともなアドバイスなんて出来ないけど。
でも、聞くことなら出来るから。
「おまえ、ありがとうネ」
お見送りでもしているつもりなのか、私たちの隣をトコトコとついてくる黒猫さん。
その澄ました横顔にお礼をした。
にゃ、素っ気ない声が返ってくる。ちょっと誇らしげに揺れる、左右六本のヒゲが可愛らしい。
黒尾のバイクが停めてある場所まで戻ってくると、ふらり、黒猫さんは浜辺へと消えていった。
「また会えるかなあ」
「蛍に飼われてんだから会えるだろ。にしてもあのクソガキ、マジで生意気だったなー……」
遠い目で語る黒尾。
チャッ、とポケットから鍵を取りだして、バイクのエンジンを吹かす。
当然のように投げつけられるヘルメット……の、はずが、いつまで経っても投げてこない。どうしたと言うのだろう。
「? ヘイ、黒尾、ヘイ」
俺に寄越せとばかりにボールを、じゃなかった、ヘルメットを呼んでみる。しかし、やはり黒尾はそれを渡そうとはしなかった。
何だってそんなこと。
問いたげな顔で彼を見る。すると、返ってきたのは最悪な質問だった。