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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第15章 extra xxx 003



 不安と絶望と疲労感。

 全部がない交ぜになって目頭に熱いものを込みあげさせる。このまま、研磨が見つからなかったらどうしよう。

 あの日、ラブホ街で出会った彼。

 研磨が声をかけてくれて本当に救われた。なのに。なのに、私は、彼になにもしてあげられない。

 その涙を拭ってあげることも、震える手を握ってあげることも、見つけてあげることすら、できない。

「……っ、研磨……ごめ、」

 限界まで溜まった涙がポロ、と零れようとした、そんな折だった。

 にゃー……

 どこからともなく聞こえた鳴声。
 暗闇に目をこらすと、クルーズ船の券売機の影から、一匹のネコが現れる。

 まっくろな黒猫。
 夜の海と同じ色。


「ぶ、にゃー」


 ブサイクだ。超、ブサネコである。

 しかしそれがまた可愛くもあり、所謂、ブサカワなのだけれども。この目付きといい。この不貞不貞しさといい。


「なんか、似てるね、……黒尾に」

「オイ何だその哀れみの目はオイ」

「いやむしろ可哀想なのはネコちゃ……あ、うそ、嘘ですからグーはやめよう落ちつこう」


 私たちを眺める黒猫さん。

 その呆れたような視線は「茶番だな」とでも言いたげだ。ほんと、黒尾にそっくり。

 二人と一匹で見つめあうこと数秒。
 黒猫さんはくわ、と小さな口であくびをして、おもむろに立ちあがった。

 尾っぽをフリフリ。ゆるり歩いて暗闇に溶けていこうとする。

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