第15章 extra xxx 003
穏やかな波音が耳に優しい。
ザザ、ザザ、規則正しく、寄せては返すさざ波。さっき電話口で聞こえていたのはこれだったのかと、妙に納得する。
しかし、緩やかな時を刻む浜辺とは裏腹に、私たちの焦燥感は募るばかりだった。
「ケンメァァァ!!!」
「……っどこにいるの」
見つからないのだ。
いくら捜しても研磨が見つからない。どこにもいない。縦に伸びた浜辺を何度往復しても、手掛かりさえ掴めない。
息を切らして走る。
声の限り彼を呼ぶ。
もう何度目かも分からない公園の入口。潮で錆びついた立て看板。ペンキが剥がれかけた園内の地図を睨みつけて、研磨のいそうな場所を、もう一度考えてみる。
でも、捜してない場所なんてもうどこにも残って──
「……っ! 桟橋は!?」
「は? ……っ桟橋?」
「クルーズ船の発着駅!」
ゼエゼエと肩で息をする黒尾の腕を引いて、再び、走りだした。
あそこなら夜はあまり人が来ないし、海と夜景が一望できる。ひとりで泣くにはもってこいの場所だ。
研磨、おねがい、見つかって。
祈るような思いで走って辿りついた先。湾にむかって真っ直ぐに伸びた桟橋に、彼は、──研磨はいなかった。