第15章 extra xxx 003
『は!? お前何でそんな危ねえ地区にいんだよ!バカか!バカ! 今すぐ迎えいくから明るいとこで待っとけバカ!』
相変わらずお口が悪い。
しかし、どうしよう。
更にマズいことになってしまった。たしかに、この辺は治安の悪さが群を抜いてるけれど、まさか迎えにくるなんて。
しかも、ここは白鳥沢組の独身寮だ。日夜を問わず隣近所から怒声罵声が聞こえてくるというオプション付き。
ブッ飛ばされる。最悪、逮捕だ。
いくら黒尾とはいえ警察官。
そんな彼にここに居るのを見られるワケにもいかず、私は、バッグを肩に引っかけて外に飛び出した。
たしか、そこの角を曲がったところにコンビニがあったはず。
黒尾が今どこにいるのかは分からないが、相手はバイクだし、モタモタしている暇はない。
気付けば駆け足になっていた。
頬を刺す木枯らし。冬の匂い。
落ちようとする西陽の眩しさに目を細めて、ほとんど外灯のない路地を行く。
煌々としたコンビニエンスの看板を潜れば、ふわり、おでんの出汁が鼻腔をくすぐった。
「いらっしゃいませ」
お辞儀が美しすぎる男性店員に迎えられて、鋭いその視線になんだか居心地が悪くなる。
名札には加々知という文字。
かがち、と読むのだろうか。
随分珍しい名前だなあ、なんて考えていると、独特の入店音とともに自動ドアが開いた。