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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第14章 extra xxx 002



 男はひどく衰弱していた。

 近付いて見てみればそれは、たしかに岩泉という男で、赤葦は怪訝そうに眉をひそめる。

 この男はクラブキャッスルの幹部だったはずだ。なぜ、及川の腹心とも言える男がここに?

 状況から見るに恐らく彼も被害者。
 どこを見ているのか分からない虚ろな瞳に、渇ききってカサカサの唇。

 最近町で出回っているドラッグだ。間違いない。

 赤葦にはその確信があった。
 この町に横行する罪はすべて、その危険なクスリさえも、白鳥沢組の管轄内で取引されているのだから。


「おい、アンタ、……大丈夫か」


 彼を襲うのは自責の念だ。

 ドラッグ自体を売り捌いたのは赤葦ではないし、それを使うよう強要したのも、もちろん彼ではないのだけれど。

 それでも申し訳ないと思った。
 どうしようもなく悲しかった。

 赤葦はホテルに備えつけの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、そっと、岩泉の口元を潤してやる。

 その様子を見守るようにして眺めていたカオリだったが、いつの間にか意識を失ってしまったらしい。

 よほどの苦痛を味わったのだろう。

 彼女も、岩泉も、その顔に無数の赤痣ができている。筋肉を強く硬直させた際に、皮膚の下にある毛細血管が切れたためだ。

 例えば歯を食いしばったとき。
 例えば腹部に力を籠めたとき。

 二人が服を纏っていなかったことも含めて、何があったのかは容易に想像ができる。

「……あ、太一さん、俺です」

 恨めしいほどの朝日を受けて煌めく摩天楼。広大な公園と隣接するように建造されたハイタワーホテル、その一室。

「やっぱり俺にやらせてください」

 響くのは、赤葦の、冷えた声。

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