第14章 extra xxx 002
画面には【川西太一】の文字。
着信がカオリからでないことに些か落胆した赤葦だったが、すぐさま通話ボタンを押してスマホを耳に当てた。
『見つかったぞ』
川西が告げたのはたった一言。
しかし、今の赤葦にとっては充分すぎる一言だった。問題は見つかったのが、トオルなのか、カオリなのか。
「どっちですか」
『トオルだ。こいつ、どうする?』
「そうですね……じゃあ、死ぬより辛い目に。あとは太一さんにお任せします」
『わかった』
そこでプツリと通話は途絶えた。
直後、今度は無料通話アプリの通知音が鳴って、川西とのトーク画面に未読の印が点灯する。
【公園前タワーホテル4101号室】
その文字列を見た瞬間。
赤葦は、早朝の通勤客とは逆方向にロータリーを回り、待機中のタクシーを一台捕まえた。
あくびをする運転手の胸倉に掴みかからん勢いで詰め寄り、とある五ツ星ホテルの名を叫ぶ。
盲点だった。
カオリは、イーグルを構えるホテルの、目と鼻の先にある姉妹店に監禁されていたのだ。
「及川……!」
全く、姑息なことをやってくれる。
今頃どこかで制裁を受けているであろう及川の顔を思い浮かべて、彼はギリ、と奥歯を噛みしめた。