第14章 extra xxx 002
悪夢を見ているようだった。
つい数時間前まで一緒にいたはずのカオリが、どこにいるのか、無事でいるのかどうかさえも分からない。
赤葦は血濡れの顔を拭い、疾走する。
『……天童さん、俺はね、あいつをどこやったんですか……って、聞いてるんですよ……!』
『……っ知、らない、し……知ってても、俺は、言わないよ……残念デシタ』
彼は眉根を寄せて思う。
鼻だけではなく歯も折ってやればよかった。いや、目玉にナイフを突き立ててやればよかったのだ。二度とこんな愚行に及ぶことがないように。
物騒な考えばかりが脳を支配する。視界が怒りで真っ赤に染まる。気持ちは焦るばかりなのに、彼女はいつまで経っても見つからない。
犯人の目星はついているのだ。
キャッスルのトオルがカオリを目の敵にして付け狙っている、と木兎に聞いたことがある。
彼女をイーグルに引き抜いたことで安心していた。あの男のテリトリーから引き離せば大丈夫だろうと、そう妄信していた。それなのに──
まさか組に内通者がいたとは。
「……クソ」
憎々しげに吐き捨てて、赤葦は一番街を駆け抜ける。
そんな彼が、ふと、足を止めた。
駅前通りに面したビルの、大きな大きな液晶ビジョンの真下だった。
握りしめたスマートフォン。デフォルト設定のままの着信音が、無機質に鳴り響いている。