第14章 extra xxx 002
豪華絢爛という言葉がピッタリだ。
カオリは部屋に入るなり思う。
一泊するだけで何百万円とかかるこのスイートルームには、一体、どんな人間が訪れるのだろう。
自分とは一生無縁だと思っていた。
煌びやかな世界。まやかしの輝き。
総大理石の床をしげしげと見つめる彼女を、そっと、赤葦がエスコートする。
促されるままシャワーを浴びたカオリは部屋で待機するように告げられ、彼の言葉に従ってキングサイズのベッドに腰掛けた。
『あの、京治さん……っ』
多くを告げようとせずに去ろうとする赤葦。そんな彼を呼び止めて、カオリは言葉をつまらせる。
その瞳は不安げに揺れていた。
無理もないだろう。
彼女はほとんど現状が理解できていないし、これから先、巻き込まれていくであろう世界についても無知なのだ。
赤葦は迷う。何を言うべきか。
別に隠し立てするつもりはないが、しかし、洗いざらい話してしまうには時期尚早な気がした。
だから、彼は言う。
『大丈夫。俺を信じて』
この言葉に嘘はない。
カオリが組にとって有益だと、必ず、組織に認めさせてみせる。そうすれば堂々と彼女を娶(めと)ることだって可能なのだから。
カオリの顔が少しだけ安堵に緩んだのを確認して、赤葦は、ひとり部屋を後にするのだった。