第14章 extra xxx 002
これで最後にしようと思った。
夢は、夢のまま。
せめて美しい思い出としてその胸に残そうと、赤葦京治は、カオリの元へと向かったのである。
『もっと、……奪って』
愕然とした。動揺した。
すごく嬉しいと思った。
心の奥底に封じこめて鍵をかけたはずの欲。この女が欲しい。どこまでも、骨の髄までも、自分のモノにしてしまいたい。
男としての欲求。
人としての愛情。
赤葦に芽生えた初めての感情は渦を巻き、やがて、彼をある決意に至らせる。
『覚悟しな』
覚悟しろ。
『絶対に逃がさない』
もう逃げられない。
普通に愛してやれないのなら、この世界なりの作法で愛そう。奪ってくれと願うのであれば、とことんまで奪おう。
常に俺の側に、ずっと側に。
イーグルで仕事の成果を出させれば、組もカオリを認めざるを得ない。そうしたら、あとは、このどうしようもなく穢れた世界で永遠に結ばれればいい。
なんという悲しい物語だろう。
誰もが憧れるハッピーエンド、そんなもの、この町には存在しない幻だ。
赤葦はその心に大きな悲哀と覚悟を抱き、彼女に、彼が愛したカオリに、鷲の烙印を晒けだす決意をしたのだった。