第14章 extra xxx 002
『……っ痛、……っ!!!』
あまりの激痛に膝をつくのは赤葦京治だった。その左腕には小型のナイフが刺さっており、赤黒い血液が止めどなく溢れだしている。
『俺はつまらん冗談が嫌いだ』
『……、っ、──……!』
『次はない。骨も残らないと思え』
卑情なまでの制裁。
組を抜けて足を洗いたいと申し出た赤葦にナイフを投げたのは、他でもなく、白鳥沢組若頭【牛島若利】であった。
ウシワカとの異名をもつ彼はまさに冷酷非道。見る者すべてを震えあがらせるその瞳は、一切の感情も持たない。
滴り落ちるのは血か、涙か。
ナイトイーグルを構える高級ホテルの大理石が、みるみる内に赤に染まっていく。
その後ろでギョロギョロと、楽しげに目玉を動かすのは、彼らと同じく【鷲匠鍛治】に忠誠を誓った天童覚だった。
『俺が縫ってあげようかァ?』
嬉々として告げる天童。
広がりつづける血溜まりに興奮しているらしい彼は、恍惚すら浮かべて、鉄臭い赤色を見つめていた。
狂気の沙汰でしかない。
しかし、これがリアル。
赤葦京治の生きる世界はどこまでいっても“こう”でしかなく、世間一般でいう幸せなど、求めることすら許されない。