第14章 extra xxx 002
季節が幾度となく移ろい、彼は、少年期の終わりを迎えた。
組から重要な仕事を任され、マネーロンダリングに奔走する日々。犯罪行為を腐るほど繰りかえし、莫大な富を、運営資金を組織のために生み出しつづけた。
灰色なんてものじゃない。
ドス黒く汚れきった毎日。
荒んだ赤葦を唯一癒やしてくれるのが、度々こっそりと訪れていた古巣(ピンクオウル)での時間だったのである。
『新しい子入ったんスね』
『ああ、マリンな。ちょっと前に突然オーナーが連れてきたんだよ。あいつマジ可愛いよなー……俺本気で狙っちゃおうかなーなんて思』
『俺ちょっと寝てくんでその子の部屋貸してもらいますね』
『は!? え、ちょ、待っ』
『貸してもらいますね』
『……ヘイ、毎度あり』
通常料金の倍額を木兎の胸板に押しつけた彼は、足音も立てずに廊下を歩く。
これは彼がサイレントキリングを得意とするための職業病なのだが、この町の新入りであるカオリは、そんなこととは露知らず。
『早く来ないかなあ、赤葦さん』
『あのさ……何度も言うけど京治くんはマジでやめとけよ。だったら俺、まだ岩泉くんのほうが安心だし、ていうか俺にしとけって』
『光太郎だけはお断りだから』
彼女が木兎の警告を聞き入れていれば、あるいは、あのような悲劇は生まなかったのかもしれない。
でも、もう、手遅れ。
赤葦はカオリに【執着】を見せた。そしてカオリは、彼の想いに応えてしまった。
賽は投げられたのだ。
もう誰にも止められない。狂いに狂った歯車は、ついに、その牙を赤葦に向けることになる。