第14章 extra xxx 002
彼は謂わば【血統書付き】だった。
父親はその道を極めた大悪党だし、母親は有名なショーパブを経営するオーナーだ。
生まれついた星がこの町。
ヒトは皆、彼を避けた。
友達なんていなかった。
ナマの拳銃や刀に囲まれて育ち、遊び相手は傷だらけのお兄さんや、やたらと着飾ったお姉さんばかり。
赤葦京治にとってはこれがリアルであり、日常であり、ごく普通の光景だったのだ。
『お前、名前はなんてーの?』
『……赤葦京治ッス』
『へえ!かっこいい名前じゃん!』
だからこそ、そんな彼にとって木兎のような男は不思議な存在であったし、初めて壁を作らずに接してくれた貴重な友人でもあった。
親に言われるがまま【社会勉強】のために就職したファッションヘルス・ピンクオウル。
オーナーである白髪の男は案外面倒見がよく、木兎と共に食事へ連れていってもらったりと、楽しい時間を過ごすこともあった。
そうして時を過ごす内、赤葦はここを心安らげる空間と思うようになり、自分の居場所とさえ感じるようになっていった。
しかし、それは束の間の幸せ。
ひとときの夢は所詮夢でしかなく、彼はある日、一瞬にして現実へと引き戻されることになる。
『京、お前、今日でクビな』
『え……何でそんな、急に』
『親父さんが鷲匠の傘下に入った。ウチは白鳥沢とは敵対関係にあるし、お前んとこの組があっちに肩入れする以上、もうここには置いておけねェ……悪いな』
こうして若きフクロウは巣立ち、その背に烙印を、白鳥沢組のシンボルである【純白の鷲】を背負うこととなったのである。