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(R18) Moulin Rouge (HQ)

第14章 extra xxx 002



 下水の臭気が鼻をつく。
 夜を失った繁華街のメインストリートには、薄雲に隠れた陽光が粛々と降り注いでいた。

 時を遡ること五年前。
 遠い日の、とある朝。

 赤葦京治がうんざりとした面持ちで一番街を歩いている。

「あかーしィ! もう一件!もう一件行こう!今日は死ぬまで飲むぞー!」

 原因はこの男、木兎光太郎だ。

 バイト先での先輩にあたる木兎は上機嫌だが、その足取りは、千鳥足というより生まれたてのヒナ鳥に近い。

 面倒くさい、と赤葦は思う。
 この巨体でフラつくのだから正直厄介でしかなかった。かと言って捨ておくワケにもいかないのが現実。先輩だし、一応。

 赤葦は「いい加減にしてくださいよ」と嘆息してみせて、フラつく木兎の身体を支えてやった。

「木兎さんはお酒強くないんですから、もう少し自制しないと……いつか本当に死にますよ」

「ヘーキ! 俺、鍛えてるから!」

「あのね……肝臓は筋肉じゃないんですから鍛えるとかそういう問題じゃな」

「よし!次はお姉ちゃんがいる店にしよう! ぱっつんぱっつんの子がいっぱいいる昼キャバ行こう!」

 あ、この人何言っても無駄だな。

 早々に説得を諦めて閉口した赤葦。
 基本的に長いものに巻かれとくタイプの彼は、ピンクオウルの看板に泥だけは塗らないようにと、先輩の監視(お守りともいう)に徹するのであった。

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