第3章 xxx 02.及川徹
ずるずると首根っこを掴まれて去っていく徹くん。「俺また会いにくるからねええ」ちょっとずつ遠くなる彼は、懸命に手を振りつづけている。
それを光太郎と並んで見送る私は、若干げっそりとした顔で嘆息した。
「……何だったの彼ら」
「ホストだよ。あ、岩泉くんは
俺とおなじ黒服ね。わかる?」
「黒服、って、ボーイだよね」
「そ。ウェイターとも言うな。
俺なんかはほぼ雑用係だけど、
岩泉くんはホストの管理なんかも
任されてる、えっと、えらい人!」
「ふうん。光太郎の説明って
色んな意味でわかりやすいね」
「嫌味だろそれ」
「違いますヨー」
私は徹くんが曲がっていった角のあたりを眺めて、さっきまでのことを思い出していた。「本番してもいいよ」彼はそう言ってたけど──
「言っとくけどうちは
客との本番禁止だから」
「……ですよね」
「あと、及川は可愛い子見ると
すぐ食って自分の客にしようと
するから、気をつけなきゃダメ」
「はい光太郎センセイ」
「茶化すな。一応心配してんだぞ」