第13章 extra xxx 001
「嘘、……だよね?」
「俺は嘘なんかつかねえよ」
「……っ! そ、っか」
夢でも見てるんだろうか。
そうであってくれたらいいのに。でも、これはどうしようもなく現実だ。どう足掻いても覚めることはない。現実世界のお話。
「ごめんな」
パリン
何かが壊れた。
「ど、して……? なんで岩ちゃんが謝るのさ……っ悪いのは、俺、でしょ……? そうやって格好つけて俺のプライドでも守ったつもり!? そういうの、本当、イライラする……っ!」
だめだ。止まんないや。
本当はこんなこと言いたいんじゃないのにね。どうしてこう、俺のこころは醜いんだろ。
自分なんて大嫌いだ。
「行かないでよ……どこにも行かないで、俺の側にいてよ……! 岩ちゃんがいなくなったら、……っ俺、どうやって生きていけばいいの……!?」
格好悪い。惨め。格好悪い。
こんな姿見せたくなかった。ここフロアの裏だし、さっきからトビオの頭がひょこひょこ見えてるし、全部聞かれちゃってる。
あーあ、本当に、格好悪い。
それもこれも全部あいつのせい。
急に俺たちの前に現れて、岩ちゃんの心を奪って、それでいて、他の男までタラしこんでる。
あの女のせい。
「……許さない、から、俺」
「は……?」
「後悔してももう遅いよ」
言うだけ言って、喚くだけ喚いて、まるで女みたいに。荷物も持たずにスマホだけ掴んで店を飛び出した。
もうどうでもいい。
全部どうでもいい。
俺から離れていっちゃう岩ちゃんなんか、──いらないよ。