第13章 extra xxx 001
岩ちゃんの俺を見る目。
冷たい目。怒ってる目。
彼はあれから──俺がカオリちゃんに嘘をついて傷付けたのがバレた日から、口を聞いてくれない。
だって仕方ないじゃん。
あの子俺に靡きそうになかったし、ああでもしないと、岩ちゃんを横盗りされちゃいそうだったんだもん。
そんなの許さない。絶対。
「岩ちゃんどうするの?このままじゃ失恋だよ? あ、ザ・失恋パーティ☆とかしちゃう?」
煽れば煽るほど。彼が激昂するのを俺は知ってる。けど、岩ちゃんは絶対に表に出そうとしない。
どうして?
普段はあんなに素直に怒るくせにさ。
なんであの女のことになると、そうやって、我慢したり辛そうな顔したりするのかなあ。
「恋なんてくだらないのにね」
「おい、その辺にしとけよ及川」
バン──……ッ!!!
まっつんが俺を窘めるのと、岩ちゃんが渾身の力でドアを蹴り破るのは、ほとんど同時だった。
岩ちゃんったら相変わらずの馬鹿力。
仮眠中のマッキーが驚いて飛び起きてるよ。どうせ途中から狸寝入りしてたんだろうけど。
「そんなに怒らなくたっていいじゃん!岩ちゃんのバカ!」
何も言わずに休憩室を出ていく背中に喚き散らす。それでも、やっぱりこちらを振り向いてはくれない。
「……岩ちゃんの、バカ」
今度は極々小さな声で呟いた。
ふと、鏡に映る自分が目に入る。
ブサイク。醜く歪んだヒドイ顔。