第13章 extra xxx 001
「あのヘル嬢、カオリだっけ?」
まっつんが急にそんなことを言うもんだから、休憩室が水を打ったように静かになった。
クリスマス営業を控えた寒い日の、とある深夜二時のことだった。
「あの子がどうかした?」
「イーグルに引き抜かれたらしい」
本日二回目。休憩室に静寂。
ついに誰も喋らなくなった。
あーあ、やっちゃったね。
一体誰に色目使って白鳥沢に捕まっちゃったのかな。
「それはそれは面白い情報だね。でも、確かなの?」
「昨日オウルの黒服が二丁目でベロンベロンになっててさ、理由を聞いたらそれだったわけ。あいつ相当荒れてたなァ」
ふうん。コータローがヤケ酒するってことは強制的に引き抜かれた、かな。
相変わらず、やり口が汚い。
これだからあの組の連中は嫌いだ。まあ、俺が言えたことでもないけどさ。
「で、誰が引き抜いたの。もしかしてまたサトリちゃん?」
「京治だってよ。あいつ、金融業の裏で牛島の右腕やってるらしい」
「へえ……稼げそうな美人なんて他店にも腐るほど居るのにね。何でまたカオリちゃんなんか」
「そんなの、自分の手元に置いときたいからに決まってんだろ。オウルは危ない客も多いし。おもに及川(おまえ)とか」
はあ、なるほどね。かの有名な高級ソープ【Knight Eagle】の幹部様が恋に落ちたってお話らしい。
自分の息のかかった店に女囲って、それで護ったつもりなのかな。
くだらなすぎて反吐が出る。
「まっつんそれ心外ー」
「お前ブラック客だろ。俺知ってる」
「うぐ……そ、それにしてもさァ!ケージくんまで虜にしちゃうなんてさ、カオリちゃんも大概ビッチだね!」
ねえ、岩ちゃんもそう思うでしょ?