第12章 xxx 11.幽閉
「ほら、もっとちゃんと舐めて」
抑揚のない彼の声がねだる。
深くまで咥えさせられた指を右へ、左へ、舌の上で動かされて卑猥な音が鳴った。
抵抗なんてできない。する気もない。むしろ、もっと酷くされてもいい。赤葦さんになら、全部、奪われてもいい。
「いいね……その目、興奮する」
彼はワントーン低く告げた途端、私の口内を犯していた指を引き抜いて、強引なキスをした。
パインの味。さっきよりも数倍濃い。
芳醇な香りを放つその糖分にあてられて、息が噎せかえる。苦しい。甘い。きもちいい。
「んっ、ふ……ぁ、はあ」
「美味しい?」
「ん、はい、……甘、っ」
息があがる。目元が熱くなる。赤葦さんの手に首の後ろを押さえられて、逃げられない。
酸素の供給を絶たれた脳が痺れる。
思考が乏しくなって、ただひとつ、目の前の快楽だけに堕ちていく。
「赤、葦さっ……ん」
「……なに?」
「もっと、……奪って」
奪って。何もかも。
貴方のものにして。
キスの隙間からねだった。
一瞬面食らったように目を丸くしてから、考えこむような彼の顔。いつもは冷淡なその瞳に、ほんの僅かだけど、人間らしい欲が映りこむ。
歯車が狂いだした瞬間だった。
「悪い子だね、……カオリは」
「………?」
「俺に本気で欲しがらせるなんて」
覚悟しな。絶対逃がさない。
赤葦さんはそう言って、自らシャツをはだけさせていく。
露わになる彼の素肌。
程よく筋肉のついた腹部には古傷。左腕には包帯。そして背中には、純白の、──鷲。